こんにちは!
カウンセラーの 田中里美 です。
皆さんには、尊敬する人はいますか?
私には「人生の師匠」と言っても過言ではない、尊敬する人がいます。
それは、保育士時代にお世話になった‥園長先生です。
園長先生との出会いなくしては、今の私はありません。
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25年も前のことです。
当時‥ 私は、新米保育士でした。
0〜1歳児クラスの担任になり、産休明けの首の座っていない乳児もいて、母親の経験のない私にとって‥ 最初は、とにかく大変でした。
実習生時代とは、全然違う「責任の重さ」を、ズッシリと感じ、毎日押しつぶされそうでした。
保育の実践‥ 授乳・睡眠・離乳食・沐浴 etc‥
何をしても‥上手く出来ず、焦る気持ちや不安が伝わるのでしょう‥ 赤ちゃんを泣かせてしまい、申し訳なく思っていました。
見かねた先輩が、代わってくれると‥魔法のように、ピタリと泣き止むから、落ち込みます。
「私もね、最初は上手に出来なかったよ。だんだん慣れるから‥大丈夫だよ!」
先輩に励まされ、落ち込んでる場合じゃないな‥頑張ろう!‥と、私は、気持ち切り替えました。
でも、頑張っても頑張っても‥
やはり上手くいかず‥ただ、空回りしていました。
先輩に助けてもらってばかりで、悩んでいました。
「保育実践集」「乳児保育マニュアル」などなど‥
保育園の書庫から借りて読んだり、本屋さんで買ったり‥ 知識に頼ろうとしていました。
そんなある日、園長先生が私に言いました。
「今は、先輩が書いた「保育計画」と、学校で学んだ教科書を読み直せば十分よ。
知識で、頭でっかちになってはダメよ。
実践の中で、子どもから学ばせてもらいなさい。
あなたはまだ新米なんだから‥
「解らないことが解らない」という状態なのよ。
「解らない自分」を認めることを武器にして学びなさい。まずはここからよ。」
私は、園長先生の「あなたはまだ‥解らないことが解らない」という言葉が、胸に突き刺さりました。
厳しいけれど、その通りだったからです。
園長先生が、私に伝えたかったのは‥
どんなに沢山勉強しても、書籍を読んでも‥実践で生かせなければ‥ただの「頭でっかち」
‥ということでした。
この時、私は‥
「実践から学ぶものに、勝ることはない」のだと‥
頭で理解 しました。
でも、それを‥心で理解 したのは‥
「実践の中で、努力をして‥会得した感覚」を味わってからでした。
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教科書や書籍から得た「知識」で、解ったと思ったら、大間違いだったのです。
例えば‥「乳児は、授乳後はゲップをさせてあげる。」‥というマニュアルがあります。
これ、何故だかご存知ですか?
①《理由》乳児はミルクを飲むときに空気もいっしょに飲み込んでしまう。飲み込んで胃の中にたまった空気が口から排出するためにゲップが必要である。そのままにしておくと、せっかく飲んだミルクを嘔吐してしまうことがある。
空気をげっぷで出してあげれば、ミルクを吐くこともなく、ちゃんと腸に送られる。吐き出してしまってはせっかく飲んだミルクが無駄になってしまう。
②《技術》授乳が終わったら‥「いっぱい飲んで美味しかったね、ゲップ出そうね」と、話しかけながら、乳児を縦抱きにしてあげ‥背中を優しくトントン‥と叩いたり、さすったりして、ゲップを出してあげる。
③《発達》首が座るまで(生後3か月位)は、げっぷが下手なので、必ず手助けが必要といわれている。
お座りの安定する頃(5〜6か月位)には、少しトントンするだけで、上手にゲップが出せるようになっていく。
では、
①〜③ を読んでくれた方にたずねます。
赤ちゃんの授乳後のゲップ‥理解できましたか?
この質問に、皆さんは「解った」と答えて大丈夫です。
でも、新米保育士は、これを読んでも、
たとえこの文章を暗記しても「解った」と答えてはいけないのです!!
解ったのは知識だけです。
ゲップを出す発達段階や、理由づけを理解し、やり方を理解したなら‥
実際にやってみて‥上手にゲップを出させてあげられたら、初めて「解った」と思っていいのだと思います。いえ、それでも‥まだまだ初歩ですね。
文章だけ読めば‥簡単そうに感じるかもしれませんが、でも、授乳は‥なかなか飲んでくれなかったり、抱き方が安心出来ないと、泣く子もいます。
ゲップがなかなか出ないと‥保育士は、他にも沢山の仕事があるから、焦ってきます。
しかし、ゲップを出さないと嘔吐に繋がり‥誤飲の危険もあるのですから、適当には出来ません。
理解して確実に実践するって、簡単なことではないんです。
保育は実践してこそです。
「解ったつもり」で、実は「解っていないもの」が、新米保育士には、た〜くさんあって‥当たり前なんだなぁ‥と、思います。
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園長先生は、私の実践の努力を、遠くから見守っていてくれました。
時には厳しく!
いや、いつも‥厳しくかな〜
「子どものため」を考えるからこそ、保育士には常に厳しい‥ 鬼・園長でした。(笑)
経験を積んでいき、私の実践に進歩が見られるようになると‥
園長先生は、以前、私が借りたかった書籍を貸してくれました。
「解らないことが解らない」だらけの、新米時代に借りて読んでも、ただの「頭でっかち」になるだけだったと思います。
「頭でっかちが無意味なこと」と「実践は宝であること」を、心で学ぶことが出来ました。
私は、園長先生のご指導のもと、主任保育士になり、保育全体を見る役割を任されるまでに育てて頂いたことで、人生に輝きを見出だしました!
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子育てがひと段落したら、非常勤保育士にでもなろうかと思っていた私ですが、
保育士時代に、実践から得た‥「発達心理学」の面白さが忘れられず‥
行動の意図(心)について、もっと学びたくなり資格をとり、「心理カウンセラー」になりました。
さて‥ ここで一つ!
心理学の世界から、こんな話をご紹介します。
古代ギリシャの哲学者「ソクラテス」は『無知の知』を説いた‥と言われているそうです。
(不知の自覚‥と言われることもある←諸説あり)
『無知の知』
何も知らない‥ということを知っていることは強いことである。
「知っている」と思い込む前の状態に身を置くことで、汝自身を知れ!
賢者と言われる人々は、「何も知らないにも関わらず、知っていると思い込んでいる。実際には知らないことにも気付けないでいる。」
ソクラテスは、自分の無知さに気づくことを、人々に説きました。
皮肉にも、これがもとで処刑されてしまいますが、弟子のプラトンが引継ぎ「ソクラテス問答法」として、今でも語り継がれています。
私はソクラテスの言葉を聴いたとき、園長先生の教えである「解らないことが解らない自分に気づきなさい」を、思い出さずにはいられなかったのでした。
私は、人としても、カウンセラーとしても、まだまだ「解らないこと」「知らないこと」があると、自覚する強さを持ち、
もっと深く解ろうとしたり、知ろうと思い、努力し続ける自分でいたいです。
「全て知っている」と思ったら、その人はそれ以上進歩しません。
勿体ないし、何よりクライエント様を前に‥傲慢ではないかな‥と感じます。
クライエント様と向き合うとき「解ったつもり、知っている思い込み」が、無いように‥
無知(ゼロベース)になれるように、努めていきたいと思います。
何故なら‥ 似た人はいても、同じ人はいません。
簡単に解り得ないからこそ‥
解ろう、解りたい、解る努力をしたいです。
本を読んだり、セミナーなどで知識を習得することも大切です。でも、実践での学びには勝りません!
これは‥保育やカウンセリングだけじゃなく、全てに言えます。
園長先生も、ソクラテスも、教えてくれた‥
私がこれからも、大切にしていたいことです。
☆田中里美☆
《 今日の空色 》どんな空に見えますか?私が見ている空色と、あなたの心が映し出している空色は、違うものです。だから‥聴かせて下さい。
私のカウンセリングは「解ろう」と努めることを大切に、あなたの話を丁寧にお聴きします。