こんにちは!
カウンセラーの 田中里美 です。
心のアルバムの中に綴じてある「思い出」を取り出して、 心理発達の視点から、今の心で読み解く‥
久しぶりの「思い出のアルバムシリーズ」です。
今回は‥
8歳の頃のある出来事で、心に刺さっていた棘(トゲ)を、今の私の心で見つめ‥ 自分で抜き取ったことを、お話します。
まず、このことわざ‥皆さんも聞いたことあるかと思います。
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*嘘つきは泥棒の始まり*
嘘をつくことは、悪への第一歩であり、平気で嘘をつくようになると、盗みもするようになる‥という意味をもつ。子どもはよく嘘をつくからと、子どもの躾に、使われるようになった。(世代差はあるかもしれませんが‥)
嘘をつく=悪いこと→泥棒の始まり
昔は、私もそう思っていました。
でも、今の私は‥そう思いません。
子どもの嘘は自分を守るために、いじらしいくらい必死なだけです。
☆☆☆
私が、小学2年(8歳)の時のことです。
よく友達と駄菓子屋に行き、買い食いすることがあったのですが‥
私のお小遣いは、周りの友達に比べてとても少なくて、みんなはアイスを買っているのに、私は10円のガムしか買えないので、居心地の悪い思いをしていました。
家が貧しかった‥というわけではなく、
お小遣いを必要以上に与えない‥ 母の教育方針が理由でした。
そんなわけで、私だけ10円ガムを買うことが続いていた、ある日‥
私は、母の財布からお金を盗みました。
100円玉を数枚‥ 自分の財布に入れたのです。
どうしても、みんなと同じアイスが欲しくて‥そのお金で買いました。
一度ではなく、何度か盗みました。
自分は、悪いことをしている
お金を盗る=泥棒
私は、悪いことと思いながら盗り、悪いことと解りながら‥アイスを買いました。
バレるだろう‥と、どこかで思っていました。
予感的中です。母は、毎日家計簿をつける人だったので、すぐにバレてしまったのです。
☆☆☆
話があるから来なさい‥と、両親に呼ばれました。
母が、私に聞いてきました。
「最近、お母さんの財布から、小銭が無くなっているんだけど、知らない?」
私は、心臓がバクバクで‥どうにかなりそうでした。
「知らない!絶対知らない!私は知らないよ〜!」
しどろもどろで、アタフタして泣きそうです。
なんて下手な嘘でしょう・・
更に、母が聞いてきました。
「最近あなたは、友達とアイス食べたりしてるみたいね。そのお金はどこにあったの?」
もう、嘘を突き通すのは無理でした。
「ごめんなさいごめんなさい‥ お母さんのお金盗りました。ごめんなさい‥」と、号泣しました。
両親は、諭すように‥私を叱りました。
「友達と駄菓子屋行くからお小遣い欲しい。」と、何故、頼まなかったの?
頼んできたら、少しはお小遣いあげたのに‥
お金を盗むなんて‥お母さんは悲しいよ。
あなたがしたことは泥棒だよ、わかる?
こんなことするのは悪い子だよ。
もう絶対にしないでね。
これからは、友達と駄菓子屋に行くときは、100円あげるから、お母さんに言いなさい。
母は涙ぐんでいました。
父は悲しそうな顔をしていました。
私は、ガミガミ怒られるよりも、ずっと‥心が痛み、二度としないと誓いました。
この時言われた「泥棒」「悪い子」
という言葉は、棘のように‥私の心に突き刺さりました。
悪いことをしましたから、弁解の余地はありません。
時が過ぎても、時々‥この棘は痛みました。
この罪悪感は、ずっと残っていた気がします。
☆☆☆
今でも、胸が痛みますが、その痛み方は罪悪感ではなくなりました。
私は、保育や心理学の実践から学んだ経験から、考え方が大きく変わったのです!
子どもの嘘には、必ず‥そうせざるをえない理由(心)があります。
盗みをするとしたら‥抑圧された心があり、追い詰められた状況だからです。
今の私は8歳の私に「確かに‥悪いことはしたけど、悪い子じゃなかったよ。」と、言ってあげることが出来ます。
*私がお金を盗った行動の理由(心)*
↓
幼稚園の頃は、姉が心臓病で入院し、私は祖父母に預けられていました。
小学生の頃は、両親は共働きでした。
愛情はもらえていましたが、母が家に居ないことが多く、寂しかったです。
(母は、私が友達とアイスを食べたていたことは、姉から聞いて知ったのです)
もっと私を見て欲しかったです。
駄菓子屋に行く前に、お小遣いをねだりたくても‥母は、家に居なかったです。
お小遣いの値上げ‥交渉したことはありますが、母に断られていたから、頼んでも‥どうせ「ダメ」と、言われるとしか思えませんでした。
*私が抑圧した本音*
↓
「私だけ10円のガムで、恥ずかしかったよ。
私だって‥みんなみたいに駄菓子屋でアイスが買いたかったんだもん! お母さんは、いつも家に居ないし、お小遣い‥どうせダメって言うと思った。
だから、私にはこれしか方法がなかった。」
8歳の私の行動には、こんな理由と、こんな本音がありました。
これは、自己弁護じゃなく‥「自己理解」です。
私は、行動の理由である心=「自分の本音」を、
自己理解→自己受容することにより、
「悪い子」「泥棒」
‥という、胸に刺さっていた二本の棘を、抜き取ることが出来ました。
☆☆☆
私は、子どもが嘘をついていることに気づいたら‥
叱る前に、この子が、この嘘をつかなきゃならなくなった理由は、何だろう?‥と、考えてみるようにしています。
私は子どもに「悪い子ね!」は、絶対に言いません。
「悪い子」という言葉は、棘となり、子どもの心に突き刺さります。
子どもに「悪い子」はいないのです。
8歳の私も、悪い子ではなく、悪いのは「盗み」という行動です。
お金を盗むのは「悪いこと」だということは、教え諭す必要があります。
無理して「良い子」になる必要もありません。
でも「良い行い」は、認めてあげましょう。
子ども時代は、感じたことを感じたまま表現し、のびのびと過ごせば、それでいいのです。
「どうして嘘をついたのか」を、解ろうともせず、悪い子ねと、全否定されたら、子どもは「だって〜だったんだもん!」という本音が、言えなくなります。
嘘の裏側には「本音」が隠れています。
本音=正直な気持ち ‥です。
解ろうとすれば、心を開いて話してくれますよ。
つまり‥子どもの嘘を読み解くことは、抑圧した本音を知るチャンスなのです。
「嘘つきは正直の始まり」と言っても、過言ではありません。
☆☆☆
自分で自分の棘を抜き、心が楽になった私は、
両親を責める気持ちもありません。
どんな理由(心)があったにせよ‥
盗みは「悪いこと」なので、叱られる必要はありました。
両親が、感情的に怒らず、涙目になるくらい‥一生懸命に叱ってくれたことに、今でもとても感謝しています。
必要以上にお小遣いを与えない‥という躾も、当時は不満でしたが「お金を大切にする習慣や感覚」が身につき、今は私の節約術に役だっています。
今回は、子ども時代の嘘について、心理発達から読み解きましたが、大人の嘘にも、もちろん理由(心)があり、抑圧した本音が隠れています。
でも、もっと複雑に入り組んできます。これはまた別の機会に☆
心に刺さっている棘が傷んだら‥カウンセリングで話してみませんか?
苦しかった「思い出」も、今の自分の心で読み解き、棘を抜いたら‥ こんな風に、違う景色になることもありますよ。
☆田中里美☆
《 今日の空色 》昔、母と2人で、観覧車に乗り‥夕焼け空を見ました。一周して降りた時、私は「足が痛いよ〜」と、嘘をつきました。楽しくて‥もう一回乗りたくて‥でも、そうは言えなくて‥ 足が痛くて、ここから動けないと‥嘘をついたんです。もう一回乗ることは叶わなかったけど、母はただ‥優しく足を撫でてくれた‥それだけで十分満たされた私でした。